京都府京都市|元田中の計画/在り-ari-

□長く愛された建築をこれからも愛そうとおもう
京都市左京区元田中。京都の繁華街からは少し離れていて、京都大学や京都造形芸術大学といった美術系大学もあり、自由でゆるやかな空気の流れるまちだ。これは、そんなまちに約 60 年前から建つ学生寮をシェアアトリエへと改修したプロジェクトである。
長年、学生や留学生などの入居者はもちろんのこと、なによりも建物のオーナーに大切に愛されていた学生寮だった。日々のメンテナンスや修繕だけでなく、元々は個室に整備されていなかった水回りを増築するなど、時代のニーズに合わせた改修が 都度アドホックに行われてきた。一方で、その行き当たりばったりともいえる改修によって内外部の環境を悪化させてしまった結果、近年老朽化が急速に進み入居者もなく空き家となっていた。
そこで今回、内外部の環境を悪化させている増築部分を解体して、地上部分に空地を「生み出し」、内部に光と風を取り込み、 建物の内と外を繋げて広がりを感じられるようにした。さらに、前面道路に面して高く積まれたブロック塀を解体することで、道(まち)に対する圧迫感を無くして、社寺の境内のような、まちに対して開かれた道の延長のような建築をつくることをめざした。

□水平垂直への広がり
1F はウッドデッキを建物の外周にぐるっと巻き、室内部分だけでなく外部空間にも侵食するような水平方向に空間の広がりを もたせた。2F は既存の天井を撤去し新たに勾配天井を設け、併せて水平方向にもフレーム状の開口のある天井を配置すること で、垂直方向の空間の広がりをより強調しようとした。水平方向の天井は収納としても活用できるようになっている。

□慣習的な仕上げ
1F は入居者が建物に介入できるように床をコンクリート土間仕上げ、壁面をラワン仕上げとし、2F は既存の土壁と対比的に 白く塗装した壁で仕上げ、室内を明るくした。 1F と 2F で仕上げにバリエーションをもたせたのは、多様な人たちに入居してもらうことを意図しつつ、壁にはある時期大流行 していた汎用材であるプリント合板が使われていたことをヒントに、近年リノベーションで慣習的に用いられている素材(ラワン合板、石膏ボード)へと意図的にスライドさせて採用し、既存建物に存在していた建物への親近感を引き継ごうと考えた。

□都市の風景に参加する建築
叡山電鉄という鞍馬山の方まで伸びているローカルな鉄道の沿線に建っている。日々、車窓からの風景を眺めている人の中に は以前からこの建物を(意識せずとも)知っている人もいるかもしれない。今回、学生寮からアトリエへと建物の使われ方が 変容したが、プログラムとしては、広くまちに開かれた場所ではない。そこで、外観は大きく変容させず、住宅街に馴染むような仕上げとすることで、「これまで」都市の風景に参加してきたこの建築が「これから」も参加していくことの意思表明のようなものとした。

□建築概要 名称:元田中の計画/在り-ari- 用途:寄宿舎 所在地:京都市左京区 設計期間:2015年2月-2016年11月 施工期間:2016年12月-2017年5月 竣工:2017年6月 床面積:234.29㎡ 施工:清水工務店 写真:長谷川健太

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